「好き」を仕事にしたい、はワガママなのか

2017年卒の新入社員の社会人生活が始まって、一週間が経ちました。ネット界隈では、既に「辞めたい」「辛すぎる」と言った声が散見されます。

彼らの中には、希望の業界に就職することができず、やむを得ず今の会社に入社したという人も数多くいることでしょう。

もしかするともう既に第二新卒枠での転職を画策しているかもしれません。

今回は、自分の好きな分野の仕事を目指すことについて語ります。

現実を突きつけられる就職活動

幼稚園や小学校まではしきりに「夢を持つことは大切だ」と周りの大人から煽られますが、年齢を重ねいざ就職活動が始まると、どうしようもない現実を突き付けられます。

ミュージシャンや映画監督と言ったクリエイティブ系の夢を目指していた人が、就職活動期が迫り、夢を諦めて就職したというケースもかなりあるでしょう。

かくいう僕も、就職活動時はゲーム業界を志望していましたが20社以上受けて全て落とされ、現在はまったく関係のない業界で働いています。働き始めてからというもの、仕事がまったくできるようにならず、仕事内容自体にもまったく興味がないため、とにかく転職することばかりを考えていました。実際に転職エージェントに相談しに行ったこともあります。

「好き」を仕事にすることについて

「自分の興味のある分野の仕事がしたい」というと、「世の中そんなに甘くない」とか「それじゃあ食えない」という批判を浴びせてくる人が結構います。

自分の興味のある分野の仕事を目指すことは、考えが甘いのでしょうか。僕はむしろ、このように考えています。

「自分の興味のある分野の仕事でないと、いずれ食えなくなる」

仕事をしていれば、必ずつらい時期が来る

2017年卒の方はこれから直面すると思いますが、会社で働いていると必ずつらい時期が来ます。これは「嫌なこともある」といった軽い意味ではなく、ストレスで朝吐き気を催すようなレベルのつらいことです。恐らく社会人生活を3年以上続けている人で、ストレスで吐いたことが一度もない人って、ほとんどいないんじゃないでしょうか……。いたとしたら、よっぽど適正のある仕事に運よくついた人か、会社がスーパーホワイトかつ恵まれた部署に配属された場合くらいでしょう。いずれにせよ、かなりのレアケースです。

かくいう僕も、社会人生活の最初の3年間、精神安定剤と吐き気止めを飲みながら出社していた時期があります(実は昨年の年末から今年の2月くらいまでも、かなり精神的に追い込まれていました)。

ストレスの原因は様々ですが、仕事が難しすぎてミスを連発したり、上司や同僚との人間関係に悩む等、種々あります。

頑張れるのは、その仕事が「好きだから」

そんなつらい時、頑張るためのパワーの源は、その仕事に対する「情熱」すなわち「好き」という気持ちです。

例えばサッカー選手であれば、毎日の苦しいトレーニングや、時には深刻な怪我をして復帰までの辛いリハビリの日々に明け暮れることもあるでしょう。それでも彼らがサッカーを辞めないのは、「サッカーを愛しているから」です。サッカーを愛していなければ、「何のためにこんなつらいことに堪えているのか分からない」という苦悩に悩まされることになります。

そんなプロフェッショナルな人たちは例外と思いますでしょうか?

社会人だってプロフェッショナルなのです。

「社会人」という職業はありませんが、例えばあなたがメーカーの営業職についているのであれば、あなたは「営業のプロ」です。開発職であれば「開発のプロ」ですし、販売職であれば「販売のプロ」です。若手だからとか、新卒だからとかは関係ありません。その仕事によってあなたが金銭という対価を得ているのであれば、あなたはその仕事のプロフェッショナルなのです。

食べるため?

「いやいや、仕事をしなければ飯が食べれないんだから、好きであろうとなかろうと、つらいことにも耐えなきゃいけないんだよ!」という反論も聞こえてきそうです。確かに正論だと思いますし、「食べていかなければいけない」という気持ち一つで仕事の理不尽にも耐えている人は大勢いるでしょう。ですが、この気持ちだけだと長期的に見ていずれ続かなくなると思います

長期的とは1、2年ではなく、10~20年、場合によってはそれ以上に長い期間の事を言っています。

「続かなくなる」とは、会社を辞めるということだけでなく、目標を見失い、ただ目の前の仕事を無難にさばいていくだけでチャレンジをしなくなるといった意味も含みます。2017年卒の方も、既に職場の「無気力人間」に出合った人もいるんじゃないでしょうか。

凡人は夢を段階を踏んで目指す

だからと言って、いきなり仕事を辞めてやりたいことを目指すというのは悪手です。

学生時代に夢を掴んで一気にスターダムへ駆けあがるような一部の天才を覗いて、ほとんどの人間はゼロからいきなり夢を叶えることはできません。

例えばあなたが小説家になりたかったとします。高校、大学と小説を書いて雑誌の新人賞に応募したものの、賞にはひっかかりませんでした。ここで、小説家以外の仕事には付きたくないから、大学を卒業しても就職せずにアルバイトをしながら小説家を目指すというのはあまりよくないパターンです。

この例では、まったくのド素人からいきなりプロを目指しています。素人の状態から、しかも10代で新人賞を受賞してプロになった綿矢りさ(17歳デビュー、後に芥川賞受賞)、羽田圭介(17歳デビュー、後に芥川賞受賞)のような才人でもなければ無謀でしょう。

例えば、新聞社に入社して記者として働きながら文章の腕を磨き、その傍らで小説を書いてデビューを目指す方法もあります。新聞社でなくとも、出版社や雑誌社に就職してもよいでしょう。もしかしたらプロの作家から創作論を聞かせてもらえるかもしれません。フリーターをしながら闇雲に小説を書くよりは、よっぽどデビューに近づくと思いませんか?

もちろん新聞社や出版社に入ることだって簡単ではありませんが、素人が誰の指導も受けずにただ一人で小説を書いてデビューするよりはよっぽど可能性があります。また、もう少し視野を広げて、編集プロダクションなど「文章力や創作の能力を磨ける」職場はたくさんあるはずです。

まとめ

長々と冗長なことを書きましたが、ようするに「関連業界から徐々に自分の夢に向かって近づいていく方法がお勧めだよ」と言いたかったのです。

一部の天才であれば学生時代からいきなり世に出て華々しい活躍をすることもできるでしょう。ですが、そんな限られた人間のことを話していても始まりません。

夢がまだまだ遠いからと言って癇癪を起して会社を辞めたり、就職を拒否したりすると転落人生をたどる可能性があります。

僕も時たま仕事の高ストレス状態が続くと極端な行動に出てしまいたくなりますが、コツコツと一歩づつ進む以外に凡人に近道はないと自分に日々言い聞かせて生きて行きたいと思います。