親の言う事を聴いても幸せにはなれないよ。「とある姉妹の話」

社会人になってそろそろ5年が経ち、今後の人生のことに漠然と不安感を抱き始めた今日このごろです。そんな中、とても興味深い「とある姉妹の話」を聞き、考えることがあったのでここに書き記そうと思います。

今進路に悩んでいる高校生や大学生の方には特に読んでいただきたいです。

親の言いつけを守り、忠実に敷かれたレールの上を歩む姉。親の敷いたレールを拒否し、我が道を進んだ妹

ある家庭に姉妹がいました。

姉妹の両親はとても厳格な人で、たびたび姉妹に「県内の有名高校に行き、地元の有力企業の事務職に就職し、二十台の前半で堅実なサラリーマンと結婚すること」と言いつけていました。

姉は両親の言いつけを忠実に守り、県内有数の進学校に進学。そこで一生懸命に勉学に励み、地元で評判の部品メーカーに就職しました。

当然両親は大喜びで、ことあるごとに姉を褒めたたえ、寵愛の限りを尽くしました。

ところが妹は親の望み通りにはなりませんでした。彼女には、「お菓子を作る仕事につきたい」という夢があり、製菓学校に通いたいと言い出したのです。

両親は烈火のごとく猛反対し、お前がそんな厳しい職人の世界で生きていける訳がない。失敗しても助けない。どうしてもやるというのなら親子の縁を切ると宣告しました。

妹は悩んだ末に自分の夢を目指すことを決意。両親は製菓学校の学費を出してくれなかったので、自分でアルバイトをして資金を溜め、奨学金も利用して製菓学校に進学。親元から離れて寮にも入り、本格的に修行の道に入りました。

我が道を進んだ妹は完全に両親から見捨てられる

言いつけを破って家を出てお菓子作りの道に進んだ妹に対して両親は完全に愛想をつかし、自分たちの言いつけを守る姉だけが我が子だと言わんばかりに姉を褒めたたえ、あまつさえ妹の悪口まで姉に吹き込みました。

両親から度を超えた賞賛を受けた姉は増長し、ときおり妹に電話をかけては「あんたはできそこないだ。お母さんが、あんたはもう自分の子供じゃないってよ」といった言葉を嘲りと共にぶつけました。

妹は家族の助けも得られない中、厳しいお菓子作りの修行に懸命に励みました。お菓子作りへの情熱だけが、彼女の過酷な状況の心の支えでした。

二人の辿りついた場所は……

やがて時は経ち、厳しい修行に耐え抜いた妹は製菓学校を卒業し、その腕を認められてとある有名ホテルのパティシエとして就職しました。彼女は毎日大好きなお菓子作りに携われる喜びを噛み締めながら日々を過ごしていました。職場の同僚と近いうちに結婚する予定もあります。

そんなある日、ほとんど絶縁状態だと思っていた両親から妹の元に一本の電話がかかってきました。両親は切羽詰まった声で、「お姉ちゃんが大変なことに。助けてほしい」と懇願してきます。両親を落ちつけながら話を聞くと、以下のような状況になっていたようでした。

地元の部品メーカーに就職した姉は、二十台半ばで職場の同僚と結婚しました。ところがこの夫と性格が合わず、離婚の末に両親の元に戻ってきました。その後しばらく引きこもりのような生活を続けていました。見かねた両親がそろそろ働くように諭したところ、彼女はものすごい剣幕で泣きわめきながら両親にこう言い放ったのです。

「私がこんな人生になったのはお父さんとお母さんのせいだ! 本当はイラストレーターになりたかった! 興味のない会社に就職なんてしたくなかった! 絶対に許さない、殺してやる!」

両親を喜ばせたかった姉

どうやら姉は、両親が喜ぶという理由だけで自分の内に秘めたる夢を押さえつけ、両親の言いつけ通りの人生を歩んでいたようです。実際に両親は喜び、姉を褒めたたえたため、姉は自分の選択は正しいと自分に言い聞かせ、言い聞かせ、ここまで来てしまったのです。

ですが自分の本当の心の声というのはいずれ必ず無視できなくなるもの。思えば姉が妹に嫌がらせの電話をかけていたのも、自分と違って夢に向かって邁進する妹に対する劣等感といら立ちから来たものだったのかもしれません。

両親は妹に対して「どうしてお姉ちゃんがこんなことになったのか分からない。私たちが間違ったのか?」と問いかけました。妹はおおよそのことの成り行きは理解しましたが、この両親に説明をしても無駄だろうと察し「申し訳ないけど、私にはどうすることもできないよ……」と言って、静かに電話を切りました。

(※この話は特定を避けるために趣旨が伝わる範囲内で若干詳細を変えています)

誰のための人生か

どうでしたでしょうか。

僕はこの話を聞いて、かなり心に来るものがありました。

皆さんの中にも親を喜ばせようとして、親の望み通りに生きている方も多いのではないでしょうか。その気持ちは素晴らしいと思いますが、もしかすると時が経った時にこの話の姉のように、破綻する日がこないとは言い切れません。

あなたの人生はあなたのものであり、両親が死んだあともその人生は続いていきます。後悔してから亡くなった両親に心の中で毒づいたとしても、恨みを晴らしたい相手はもうこの世にはいません。

両親を喜ばせたいと思う気持ちはとても素敵ですが、自分の人生を決する重大な決断においては、第一に優先すべきは自分の本心です。

このお話の「妹」のように、たとえ遠回りになったとしても、自分の本心に付き従った人生を歩むべきです。そうしなければ結局両親に恨みをぶつけてしまうことになりかねません。

今一度、自分は本当に自分の人生を生きているか見つめ直してみるのもよいかもしれません。

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