「嫌な仕事はすぐ辞めろ」と煽る人々は、責任なんか取らないよ

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近年、有名人や著名ブロガーなんかが「嫌いな仕事を続けるべきではない。今すぐ辞めて自分の好きなことに集中すべし」という趣旨の内容をSNSなどを通して発信しているのが見受けられます。

実際には発信する人によって内容は多種多様ではありますが、これらの言葉を曲解して受け取る新社会人が数多くいるなと感じています。

  • 学校を卒業したら会社には就職しないでネットビジネスで生きていく。
  • やりたいことが特に無いから、しばらくフリーターやって人生の目的を見つける。
  • そもそも日本の就活はおかしいし、スーツ着たくないから留学して海外に行く。

こういった風潮に関して、色々と思うことを書き綴ろうと思います。

好きなことを仕事にするのは大いに賛成

嫌いな仕事でも我慢してやれ! なんて頭の固いことを言うつもりはありません。大体こういう発言をする人は、自分が嫌いな仕事で上司から怒られたりしてストレスをためていながらも、様々な理由で仕事を辞めることができない人に多いと思います。

僕は全ての人々が自分が大好きでやりがいを見出せる仕事ができる世の中になればよいと思っています。

また「どんな仕事も本気で取り組めば、好きになってやりがいを見出せる」という主張を時々見ますが、それもあまり正しくないと思います。そういうケースもあるでしょうが、やはり一度嫌いだと思った仕事は職を変えない限り好きになるケースは少ないでしょう。

だから、僕の基本的な立場は「好きなことを仕事にする」というメッセージを発する著名人たちに同意しています。

ただ、このメッセージに対してあまりにも短絡的な受け取り方をする人間が多いとも思います。

誰かの犠牲の上にいながら自由を主張する若者

学校を卒業した新社会人の方々のブログを良く見ます。

その中には「新卒で入った会社を3ヵ月で辞めた。無理して好きでもない仕事をするのは人生の無駄! 今は本当に自分が心からやりたいと思える仕事を探して色々とチャレンジしています!」という内容の物も数多くあります。

別にこれ自体は個人の自由ですし、一見前向きな生き方にも見えます。ですがよく彼らのブログの内容を読んでみると、実家暮らしで両親に面倒をみてもらっているパターンが非常に多いのです。

自分で働いて生計を立てている訳でもなく、実家で両親に養ってもらいながらブログで「自分のやりたいことを仕事にすべし!」と主張するのって、あまりにも厚顔無恥なのではと思います。

就職できていないことが悪いと言っているのではありません。就職難で中々仕事が決まらない中、一時的に実家で両親に助けてもらいながら就職活動を続けているというのなら話は別です。ですが、前述した主張をする若者たちは得てして就職活動をするでもなく、まだほとんど利益が出ていないアフィリエイトやネットビジネスなどの夢をただ語っているだけなのです。

別にフリーターだろうが派遣社員だろうが、自分の稼ぎでメシを食っている人は立派だと思いますし、そんな人たちが「いつか自分はこんなことがやりたいんだ!」という夢を語るのであれば、大いに応援したいです。ですが、実家で親のお金で暮らしていながら、まずは自分の生活基盤を固めるでもなく、大仰な夢を語る若者の言葉には重みも説得力もありません。

そんな若者には

あなたが今するべきことは、大風呂敷を広げることじゃなくて、自立することでは? そしてその先で自分のやりたいことを目指せば良いんじゃない?

と思ってしまいます。

こういう考え方って、今は「老害」と呼ばれてしまうんでしょうか。

好きなことをやれと煽る人々は責任なんて取らないよ

さて、もう一つ懸念されるのがこれです。

著名人やブロガーがツイッターで「嫌な仕事は今すぐ辞めて、好きなことを仕事にしろ!」と煽るのを見て、短絡的に仕事を辞めたとします。その後、その人が生活に困ったとしても、煽った人々は責任なんて取りません。

そんなこと当たり前と思うでしょうか。ですが、僕は今後こういうケースで逆恨みから事件に発展するケースが出てくるのではと懸念しています。

今20代前半の若者が、上記した煽りを受けて仕事を辞め、アフィリエイトやネットビジネスを始めたとします。しかし中々結果は出せず、やがて両親の貯金も尽き、やむなくアルバイトでギリギリの生活をする日々。気付いた時には立派な中年になって、もはやまともな就職口もない。そうなった時

「あいつがブログにあんなこと書かなければ俺は仕事を辞めなかった……。俺の人生をメチャクチャにしやがって、絶対に許さない……!」

こう考える人が一人も現れないと言い切れるでしょうか。実際に2018年、ブロガーのhagex氏が彼の読者から「著作の内容に騙された」という理由で刺殺される事件が起こっています。

どれだけ有名な人が発信している内容であっても、その内容の真偽は自分で見極めた上で行動するというのが一般常識です。また、ある人には当てはまる内容であっても、別の人には当てはまらないケースもあります。だから、リスクを伴う決断に関しては、ことさら自己責任の言葉を念頭に置いて細心の注意を払う必要があります。

何度も言いますが、こんなことは当たり前なのです。しかしそれが分からない人も世の中にはいるのです。

ここ数年、テレビのコマーシャルで「CM上の演出です。真似しないでください」というテロップが過剰に強調されるようになりました。もしかすると、今後は著名ブロガーのブログにも「本ブログ記事の内容は個人の意見です。参考に行動される際は、自己責任の元でお願いいたします」といった「免責」を載せるのが常識になるかもしれません(もう書いている人もいると思いますが)。

自分の好きなことを仕事にしよう

色々とネガティブなことを書きましたが、冒頭で書いた通り、僕は自分の好きなことを仕事にするというのに大賛成です。だから、短絡的に行動するのではなく、偉大な先人が辿った道を多いに参考にさせてもらいましょう。

例えばプロブロガーのヒトデ氏。今でこそ彼はブログ一本でメシを食っていますが、務めていた会社を辞める際も相当慎重に行動しました。

彼は大手自動車メーカーで働く傍ら「今日はヒトデ祭りだぞ!」というブログを運営していました。そして、同ブログ運営1年目にして月で収益21万円を稼いだ際にも、「まだまだ会社は辞めない」とブログに書いています。

月の収益が21万円あれば、その後の伸びへの期待とそれまでの貯金を頼りに会社を辞めてもよさそうなものですが、「まだまだ」という枕詞を付けるほど到底退職が頭によぎらないほど慎重に行動しています。

さらに、彼が仕事を辞めたことを記事にした2017年8月。その記事の中で「右肩上がりに増える」ブログ収入に対してそれらを使わずため込み続け、数年無収入でも大丈夫なほど貯金していると書いていました。

この時点での彼の月の収益は分かりませんが、21万円を稼いだことを記事にしていた2016年1月から1年半以上経過しているので、その間「右肩上がり」に増えていたのであれば恐らく100万円を超えていたのではないでしょうか(※ただの予想です)。

これに加えて彼は「転職も視野に入れている」と書いた上で、実際に大手Web系の企業からオファーももらっていたようです(断ったみたいですが)。

この段になって、ようやく彼は仕事を辞めたのです。

石橋を叩いて渡るどころではありません。石橋にハンマーを振り下ろし、硫酸を大量投下し、トドメにミサイルで爆撃した上で一切の傷が無いことを子細に確認し、ようやく渡ったというレベルです。

これに比べれば、著名人の煽りを受けて簡単に仕事を辞める若者など、発泡スチロールで出来た橋を走り抜けようとするようなものです。落ちるに決まっています。

まとめ

最後に僕も「免責」を書いておきますが、今回主張した短絡的に仕事を辞めない方が良いというのは「生命に危険が及ぶほどのブラック企業に勤めている場合」を除きます。例えば

  • 恒常的に100時間以上の残業がある。
  • 上司が指導と称して暴力を振るったり、包丁を突き付けたりする。
  • 仕事が終わらないと会社に監禁され、家に帰れない。

このレベルのブラック企業に勤めているのならば、それ自体がリスクなので一も二もなく辞めましょう。

でも、会社に勤めていれば一時的にストレスで食欲が落ちたり、吐き気がするようなこともあります。少々乱暴な意見かもしれませんが、それらもある程度試練と考えて乗り越える必要があるものだと僕は思っています。

※あくまで「一時的に」です。これらの症状が常に出るようであれば、休職や退職も視野に入れる必要があります。

僕は5年半の社会人生活の中で、吐き気止めと精神安定剤を飲んで会社に行っていた時期がありますが、そういった辛い期間は長くても数ヵ月で、何とか持ちこたえて今に至ります。ここ1~2年は薬を服用していません。ある程度心臓に毛が生えたのだと思います。

僕はお腹に肉が付いてくるのと比例して、精神も図太くなっていった感覚があります。以前、僕が仕事でミスをすると怒鳴る上司に悩まされていた時、ある日吹っ切れて机をブッ叩きながら怒鳴り返した際、彼が慌てていたのを見たのは中々に爽快でした。

少々脱線しました。

あなたが今している仕事が、自分のやりたい事とかけ離れていたとしても、無駄にはならないはずです。いつか自分のやりたい仕事についた時の糧にしてやるぐらいの気持ちで、虎視眈々とその時に向けて準備を進めましょう。