漫画と小説を比較して「小説の方が高尚だ」と豪語する人間とは友達になれそうにない

物語が大好きです。

小説、漫画、アニメ、ゲーム、ドラマ、ありとあらゆる「物語」を伴うコンテンツを僕は愛しています。どのコンテンツにもそれぞれの良さがあり、優劣なんてつけようがないと感じていますが、世の大人がしばしばこういうことを言うのを耳にしてきました。

「漫画は低俗でくだらない。小説は高尚である」

ハッキリ言って僕はこの意見に賛同できません。むしろ嫌悪しています。

今回はこの意見についての反論を書きたいと思います。

なぜこのような意見が生まれるのか

さて、冒頭に書いた意見が出る理由の一つが「漫画は子供が読むレベルの低い書物。小説は大人が読む高尚な書物」という誤解が広がっているからではないかと思います。

例えばワンピースでは、キャラクターが大げさに驚いた顔で「ぎゃぁあ~~!」などという奇声を上げる表現が散見されます。世の高尚ぶった大人たちはその一面だけを取り上げて「低俗でくだらん」と思うのではないでしょうか。

ですがワンピースを深く読んでいくと、現実で起こった人種差別や疫病などを参考に考えられたネタがいくつも出てきます。例えば「空島編」で描かれた架空の病である樹熱」の特効薬となる「コニーネ」という薬は、この世に実在する「キネの木」から作られる「キニーネ」を参考にしていることが読者からの質問コーナーのSBSで明かされています。また、「樹熱」という架空の病も作中で描かれる症状が実在する感染症である「マラリア」のそれと酷似しており、元ネタになったのではないかという推測があります。

この例はごく一部で、その他にギリシャ神話や聖書などありとあらゆる元ネタと思われるものが存在します。

読者のほとんどはこんなことは考えずに読むと思いますが、作者の尾田栄一郎氏の広範に渡る知識と、それを自然にネタに落とし込む力量は人智を超えたレベルにあります。個人的にはまさしく「天才」と呼ばれるべき人物であり、日本漫画史にその名を刻む漫画家であると本気で思っています。

こういった事に考えが及ばず、ワンピースをただパンチやキックをしてたまにバカ騒ぎしているだけの漫画だと考える大人が漫画を「くだらない」とのたまうのでしょう。果たしてくだらないのは漫画なのか、それとも物事の一面を見ただけで全容を判断する浅薄な頭の人間なのか……。

小説は想像力を養う

さて、漫画と小説に優劣はつかないと書きましたが、小説が漫画に勝っている「部分」もあります。それは、読み手の想像力を育むということです。

漫画は絵によって表現されるため、登場人物の風貌やその場の風景なども全て視覚的に理解することができます。よって、そこに読者の想像の余地はありません。

反面、小説は文章だけで表現されるので、その文章を読んで頭の中にどんな世界を思い浮かべるかは読み手の想像力にゆだねられています。

「その女性は艶やかな黒髪で、目鼻立ちがくっきりとした凛々しい面構えだった」

こんな文章があったとして、頭の中にどんな風貌の女性を思い浮かべるかは人によって千差万別でしょう。これを繰り返すことで想像力が育まれ、人の気持ちを汲み取ったり相手の立場に立って物事が考えられるようになります。これによってより良い人間関係を築いて豊かな人生を送る手助けになる可能性があります。

もしかすると小説を一方的に賛美する人間は、この「想像力を養う」という一点のみを過大評価してそれが全てだと考えているのかもしれません。ですが物語を鑑賞することによって我々が受け取る恩恵は数多あり、想像力を養うことはその一つにすぎません。推察するに、子供を育てている大人が自分の子供に「想像力豊かな人間になってほしい」と願うあまりにこういう考え方になるのだと思います。

自分の子供の成長を願う考え自体は否定しませんが、だからといって相対的に漫画の評価を下げて「漫画はくだらない」と自分の子供に刷り込むのは、教育上良いことだとは思えません。

漫画によってしか表現出来ない物語もあるでしょうし、ワンピースはその中の一作だと強く思います。ワンピースのあの奇想天外かつ壮大な世界観は、文章では到底表現し得ないと思います。

漫画しか読まない子供に小説も読んでほしいならば、漫画の素晴らしさはよく分かると伝えた上で、小説にも漫画に負けないくらい面白い作品があるんだよ、と伝えてあげるのが得策ではないでしょうか。

まとめ

念のために書いておきますが、作品ごとの好き嫌いについては僕はあってしかるべきだと思います。だからワンピースやその他の漫画作品を嫌いだと思う人がいたとしても、それを「漫画だから」というあまりに浅いものではない、キチンとした理由があれば納得できます。

僕は小説も漫画も大好きです。

漫画では、この記事で例に上げたワンピースを始めとした王道の作品を読みますし、小説では東野圭吾に傾倒しています。どの作品も僕にたくさんの感動を与えてくれて、僕の人生を実りのあるものにしてくれました。

今後僕が年を取って50代60代になっても、高尚ぶらずに「ワンピース面白い! 最高!」と言い続けられる老人になりたいと思います。